経理物語13~15
第13話 法人設立か?part1 社会保険等 平成18年4月1日作成
借方一郎の商売は順風満帆で、どうやら借方一郎と妻の良子だけでは手が回らず従業員を雇用しようとしています。
借方 一郎 忙しい!猫の手も借りたいで!
繰越 宗男 もうそろそろ、従業員でも雇ったらええんちゃうん?
借方 一郎 と思って、求人広告に掲載したんやけど問合せの1つもなかった。やっぱり個人事業やったらアカンのかな?
繰越 宗男 そうやな。一概には言われへんけど優秀な人材を確保しようと思ったら、やっぱり法人の方がええわな。
借方 一郎 そらそうやろな。5月になったら法人にしよかな。
記帳 花子 それもそうやけど、法人で従業員を雇用するとなったら、社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)とか労働保険(雇用保険・労災保険)は強制適用が原則やで。
借方 一郎 きつー
帳簿 太郎 労働保険については、一人でも労働者を雇い入れるんやったら個人事業の場合でも強制適用なんやで。強制適用でなくても社会保険とか労働保険は加入せーへんかったらそれこそ良い人材は集まらへんで!
記帳 花子 社員の幸せと会社の発展を同時に考えられる経営者になってほしいね。
借方 一郎 ごもっともで。社会保険と労働保険ってどれが会社負担分かどうもよく分からん。
帳簿 太郎 まず、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料は会社と社員の折半で、労働保険の労災保険料は全額会社負担で、雇用保険料は会社と社員の折半ってことになる。
借方 一郎 結構、会社に負担になるんやな。会社勤めのときは、そういう保険は当り前のように思ってたけどちゃんとやってくれてたんやな。
帳簿 太郎 あと、注意点としては法人の社長については、雇用保険と労働保険は加入できひんで。
借方 一郎 ふ~ん
帳簿 太郎 法人にしたら様々な責任や義務が生じることになるけど、今後更に事業を拡大して行くんやったら、ちょうど良い時期かもね。
借方 一郎 法人にしたら個人事業とどこが違い、どういう実益があるんかをもう少し教えてほしいな。
帳簿 太郎 例えば、どういうことを比較したいの?
借方 一郎 やっぱり1番は税金かな。あとはメリット・デメリット。
最後に法人設立の手続きのやり方とか、分からんことばっかりやで。
帳簿 太郎 う~ん。今日はもう遅いからな~・・・
法人について基本的なことやけど、例えば法人って何のために存在すると思う?
借方 一郎 そらー、社長のもので金儲けのためにあるんやろ?
帳簿 太郎 ちょっと難しく言うと、法人とは自然人以外で権利義務の主体たるもので、その構成員(ex株主)とは個別の人格があって、営利を目的とするんやで。
借方 一郎 むずい。
帳簿 太郎 要は法人の名において契約をしたり、権利を取得したり義務を負うんや。 具体的に言うたら、法人名で不動産の移転登記もできるし、法人の名において訴訟当事者にもなるんや。何でこんなことを言うんか分かるか?
繰越 宗男 今日は力が入ってまんな~。
帳簿 太郎 よく中小企業の経営者で個人と会社の財産や権利義務を混同して痛い目にあった経営者をよく見てきたからなんや。
借方 一郎 よく分かった。経営者と会社は別の人格ということは大切やな。
第14話 法人設立 part2 (定款)平成18年5月1日作成
会社法も施行され、一郎君は法人設立を決めたようです。
しかし、法人設立には様々な手続きがあり何から手を付けてよいか分かりません。専門家に依頼するのも良いのですが、重要なポイントはおさえておきたいところです。
借方 一郎 先月の話の続きやけど、法人のメリットについて教えてほしい。
帳簿 太郎 節税面で言うと経費が認められやすくて範囲が広いわな。
ほんで、給与も経費として認められるのが大きい。
借方 一郎 そうやねんな、去年ようさん利益がでて税金ようさん払ったもんな。
帳簿 太郎 法人は一定税率やから、どんなにたくさん儲かっても、法人税は30%までしか税金がかからへんで。
・ 800万円以下=22%
・ 800万円以上=30% など
記帳 花子 ちなみに個人事業の所得税は累進課税になってるから、所得(=儲け)が多かったら、そのぶん、税率が高くなるね。
課税される所得が
・330万~900万円未満 =20%
・900万~1800万円未満 =30%
・1800万~3000万円 =37% など
帳簿 太郎 その他、法人やったら資金の調達がしやすいとか、将来の事業継続、等やな。
借方 一郎 ウチの場合は絶対、法人のほうが得やな。
決めた!。株式会社を設立いたします。
急がへんからぼちぼち、みんなで勉強しながらすることにするわ。
記帳 花子 みんなで?・・・・・・・・・
借方 一郎 何から手を付けよか?
帳簿 太郎 なんちゅうても、一番大事なんは会社の根本規則で定款やな!
新会社法で会社の裁量が広くなったし、ここは慎重にせな。
借方 一郎 まず、定款の見本ちゅーか、ひな形があったら参考にするわ。
帳簿 太郎 そうやな、一郎君の場合は発起人の発起設立で、小規模やからおおよその記載事項は決まってくるからな。
記帳 花子 定款には絶対的記載事項いうて定款が効力を有するために絶対に記載せなアカン事項と、相対的記載事項いうて記載せんでもいいけど、記載したらはじめて記載された事項の効力が生じるもんがある。あと任意的記載事項は、記載しても法的効力は生じへんけど、定款で明確にしておいたら会社の運営がスムーズになる事項やねん。
帳簿 太郎 絶対的記載事項は目的・商号・株式の総数・設立に際して発行する株式の総数・本店の所在地・広告をする方法・発起人の氏名及び住所。相対的記載事項の1つの例は前に説明した、株式の譲渡制限(閉鎖会社)の規定の記載は大事。この規定があったら取締役等の任期が最大10年までとする規定もおけるし、取締役が一人とする規定をおくこともできるんやで。任意的記載事項の1つの例は営業年度で決算月の後2か月くらいは忙しくなるから、それを考慮して決算期を設定すると良いな。
記帳 花子 そうそう、新会社法で類似商号の調査をせんでも良いことになったらしいね。
帳簿 太郎 つまり、同一市区町村で、同一目的かつ同一・類似商号の会社でも認められるようになった。
記帳 花子 すごい改正やな。
帳簿 太郎 あとは、公証人役場で定款の認証を受けるんやけど、定款は極めて厳格なものやから慎重に何度もチェックしなアカンで。
第15話 法人設立 part3 (届出)6号 平成8年6月1日作成
借方一郎の株式会社は無事に登記を完了し6月1日に設立しました。
登記を完了してもこれで終わったわけではなく、まだ様々な届出等があります。
借方 一郎 やっと会社設立登記が終了したで~これでワシも会社の社長や
記帳 花子 社長やからってうかれてたらアカンでー
帳簿 太郎 届出は済んだんか?
借方 一郎 届出って何の?
帳簿 太郎 税務署と市区役所と都道府県への設立届けやな
税務署には青色申告の届けもやで
借方 一郎 法人も届出せな青色申告にならんのか?
帳簿 太郎 法人でも青色申告の特典があるから、普通は届出するわな。
借方 一郎 法人は青色申告が義務で、届出せんでも良いと思もてた。
帳簿 太郎 ほかに給与支払事務所等の開設や、源泉の納期特例するんやったらこの届出や、ほかにも処理方法の届け出なんかもあるな。
借方 一郎 源泉の納期特例って何や?
帳簿 太郎 前に言うてなかったっけ?
源泉所得税は、毎月支払う必要があるねんけど、届出したら年2回にまとめて納付できるねん。ただし給与の支給人員が常時10人未満っていう条件はあるけどな。
借方 一郎 なるほど、面倒くさがりのワシにとってはその届出は必要でんな。処理方法の届出ってなんぞや?
帳簿 太郎 1つだけ挙げるたら前に説明した減価償却。法人の場合、届出しなかったら定率法で届出したら定額法にできるねん。まだいろいろあるけど今度説明するわ。何も届けでせんかったら、規定通りちゅうことやな。
借方 一郎 しかし、何でも届出でんな。
記帳 花子 ところで、一郎君は給料いくらとるんや?
借方 一郎 そんなん、儲かったら儲かっただけやな
帳簿 太郎 個人と違って、会社の社長になったといえば、給料がもらえるんやけど、役員給与は原則として毎月定額やったら損金算入(経費)になるけど、賞与みたいに特別に支払う場合は、前もって税務署に届出な損金算入(経費)にならへんねん。
借方 一郎 ムカついてきた。そんなことまでせなアカンの。
帳簿 太郎 とりあえず、社長が給料とったり社員に給料を支給したら、源泉を徴収せなアカンってこと忘れたらアカンで。
借方 一郎 仕訳はどうしたらええの?
帳簿 太郎 仕訳の仕方もいろいろあるけど、例えば・・・借方は現金で貸方は預り金でええで。 ほんで、納税したら借方は預り金で貸方は現金となる。
借方 一郎 なるほどな。いろいろまだまだ勉強せなあかんこといっぱいやな社会保険の手続きもせなアカンし・・・・